かつての日本の中心地、畿内の「一宮」の文化財を巡ろう

かつての日本の中心地、畿内の「一宮」の文化財を巡ろう

日本各地に点在する「一宮」。それぞれの地域で最も尊ばれるこの神社たちは、歴史と文化の宝庫です。
今回は、そんな一宮の中でも、かつての日本の中心地である畿内(現在の京都・奈良・大阪を中心とするエリア)のものをご紹介したいと思います。初詣の参考にも!

「一宮」とは?

一宮とは、平安時代から鎌倉時代にかけて形成された、武蔵国・相模国など令制国ごとに定められたその地域でもっとも格式が高いとみなされた神社のこと。

地域の核となる神社であるため、地域の有力者の保護を受け、貴重な文化財を今に伝えるところも少なくありません。

この記事では、畿内諸国の一宮の中から、国宝・重要文化財を所有する神社を厳選してご紹介したいと思います!

厳選!畿内の「一宮」

山城国(現在の京都府南部)一宮 上賀茂神社・下鴨神社

上賀茂神社・下鴨神社

京都市を含む、現在の京都府南部にあたる山城国の一宮は、世界遺産にもなっている上賀茂神社・上賀茂神社です。

京都の守り神として、京都に平安京ができる以前からこの地域に鎮座してきました。

そんな下鴨神社・上賀茂神社は、ともに国宝の本殿・権殿という建物があります。

定期的に新しく社殿を作り直す式年遷宮が江戸時代末期まで続いていたため、現在の建築は幕末のものですが、平安時代以来の伝統を残す建築として国宝に指定されています。

その建築様式は流造(ながれづくり)と呼ばれるもので、社殿にかかる屋根が、後方よりも前方が長くなっています。

下鴨神社・上賀茂神社を祖として、全国にこの建築様式が広まったと言われています。

大和国(現在の奈良県)一宮 大神神社

大神神社

日本という国家の原型が誕生した地、大和国の一宮は、桜井市にある大神神社です。大神と書いて「おおみわ」と呼びます。

大神神社の特徴は、「本殿」が存在しないことです。多くの神社には、神様の住まいのような存在である本殿という建物が存在し、その手前に私たちがお祈りをする拝殿という建物が並ぶという形を取ることが多いですが、この大神神社は三輪山という山そのものが御神体で本殿がありません。

神社に本殿が誕生するのは、仏教が伝来したのち、飛鳥・奈良時代ごろのこと。お寺の建築に影響を受けて、神社の建築も発展していったといわれています。

この大神神社は、本殿という建物が登場する以前の、古い祈りの形を残している点でとても貴重なのです。さすがは奈良の一宮、歴史が深いですね…。

江戸時代中期に建てられた拝殿が有名ですが、文化財好きとしておすすめしたいのは同じく重要文化財に指定されている「摂社大直禰子神社社殿」です!

外側の外陣部分は鎌倉時代のもの(これでもとっても古い!)ですが、その内部は奈良時代の姿をとどめており、奈良でも屈指の古建築としてマニアに知られています。

しかもこの建物、現在は神社ですが、かつては寺院のお堂として建てられたものなのです。

仏教伝来後、奈良時代ごろから、日本古来の神々への信仰と、仏教の信仰が混ざり(神仏習合)、神社で仏事が行われたり、神々が仏教の守護神として扱われるようになり、神社に付属するような形でお寺が造られるようになりました。こうしたお寺を「神宮寺」といいます。「摂社大直禰子神社社殿」はかつての大神神社の神宮寺、「大御輪寺(だいごりんじ・おおみわでら)」の仏堂として建てられました。

明治時代の「神仏分離」という政策で、神社とお寺は明確に区別されるようになると、大御輪寺は廃寺となり、お堂は改めて神社の建物として扱われるようになりました。その際、お祀りされていた仏像は周辺の寺院に移されたのですが、この仏像たちがまた素晴らしく、桜井市の聖林寺に移された十一面観音像は奈良時代を代表するものとして国宝に、また法隆寺に移された地蔵菩薩立像は、平安時代初期の名品としてこちらもまた国宝に指定されています。

聖林寺は大神神社とも近いので、合わせてぜひ拝観してみてください。

摂津国(現在の大阪府北部・兵庫県南東部)一宮 住吉大社

住吉大社

現在の大阪市・神戸市を含む摂津国の一宮は、大阪市住吉区にある住吉大社です。

住吉大社には黄泉の国から帰還したイザナギが禊を行った際に誕生した住吉三神と、神功皇后が祀られています。住吉は古来港町として知られ、航海安全祈願の神社として信仰を集めてきました、また風光明媚な住吉では、平安時代以来たくさんの和歌が詠まれたことから、和歌の神様としての信仰も集めています。

住吉大社には、国宝に指定されている四つの本殿があります。下鴨・上賀茂神社と同じく式年遷宮のため現在の建物は江戸後期のものですが、その建築様式は飛鳥時代のものを継承しているとされています。伊勢神宮の神明造や出雲大社の大社造と並び、日本最古の神社建築の様式を今に伝える住吉造の社殿に注目です。

その他畿内の一宮(河内・和泉)

大阪府南東部にあたる河内国の一宮は東大阪市の枚岡神社です。藤原氏の氏神を祀るこの神社には、奈良の春日大社と同じく、春日造の社殿が4つ並ぶという構成をとっています。現在の社殿は桃山時代に豊臣秀頼によって再建されたもので、東大阪市指定の文化財となっています。

大阪府南西部にあたる和泉国の一宮は堺市の大鳥大社です。この神社の本殿は、大鳥造という独特の建築様式を持つことで知られています。残念ながら古い社殿は失われ現在の本殿は明治時代のものですが、出雲大社の大社造から発展した古い建築様式として注目です。

畿内の一宮で神社建築の歴史を学んでみよう

日本の歴史の源である近畿地方の一宮には、他の地域と比べても歴史が色濃く残されています。

一宮巡りを通して、ご利益とともに知識も持ち帰ってみては?

以上、畿内一宮のご紹介でした。

全国の文化財を地図から探せるサイト、「文化財マップ」では、皆さんの町の神社の国宝・重要文化財も掲載しています!ぜひこちらもチェックしてみてください!

https://bunkazai-map.colour-field.jp/