
令和7年新指定国宝・重要文化財(建造物)を追加しました
先日5月16日発表の文化審議会の答申で、新たに1件の国宝・8件の重要文化財が誕生することになりました!
今年はどんな文化財が指定されたのか、以下詳しく見ていきます。
京都・大津が誇る近代遺産 琵琶湖疏水が国宝・重文に
今回新たに国宝・重文に指定されたのが「琵琶湖疏水施設」です。
合計24の建造物が重要文化財となり、その中から、「第一隧道」「第二隧道」「第三隧道」「インクライン」「南禅寺水路閣」の5つが国宝に指定されます。
(国宝は重要文化財の中から選ばれるので、国宝は重文も兼ねています)
「南禅寺水路閣」は写真撮影スポットとしても人気で、京都観光の際に立ち寄った方も多いのではないでしょうか。
「琵琶湖疏水」とは、名前の通り、滋賀県大津市から京都市まで琵琶湖の水を運んでくるために作られた水路のこと。
造られたのはなんと明治の初め、第一疏水の完成はまだ20世紀にもなっていない1890年のことでした。大津と京都の間にはいくつもの山々が立ちはだかっています。
大津から山科へ、山科から蹴上へと、最新の技術を用いてトンネルを掘って水路を繋げていくのは想像を絶する大工事でした。
完成した琵琶湖疏水は京都の近代化に大いに貢献しました。
水道インフラはもちろんのこと、琵琶湖から京都さらには淀川を通って大阪へと至る一大水運ルートが形成され、産業や観光の発展に寄与しました。
運ばれてきた水は水力発電にも活用され、その電気を用いて京都では日本初の路面電車が整備され、多くの工場が造られ、産業都市・京都の繁栄に繋がりました。
さらに、豊富な水資源によって、南禅寺界隈では別荘の開発が進み、疏水の水を使った近代庭園も多く作られました。今も近代の邸宅が立ち並んでおり、重要文化財に指定されているものも少なくありません。哲学の道の横を流れているのも琵琶湖疏水です。今日の京都の景観に与えた影響は計り知れません。
琵琶湖疏水は産業的にも、そして文化的にも近代京都の発展に欠かせない存在だったんですね。
近年ではインクラインの桜や水路閣などが人気を博し、遊覧船なども出ていて、観光資源としての魅力も高まっています。
今回指定された建造物は山を貫通して水路を繋いだ隧道(トンネル)、水の落差が激しいところで船を引っ張り上げたインクライン、そして京都に電力を供給した発電施設などです。
京都の発展を支えた文化財たち、ぜひ巡ってみてください。
70年大阪万博の象徴、太陽の塔が重要文化財に
大阪・関西万博が開催される今年、万博記念公園の太陽の塔が重要文化財に指定されました。
言わずと知れた大阪万博、ひいては大阪の象徴のような存在です。
建造物というよりは美術工芸品のような側面が強いような気もします。 岡本太郎作品の中でも初の重要文化財指定です。
たった(?)55年前の建物が重文になるというのもちょっと不思議な感じですが、昨年は1973年築の瀬戸内海歴史民俗資料館も重文になっており、これからは戦後の建築もどんどん指定されていくようになるのかもしれません。
2020年の東京オリンピックの時には、1964年東京オリンピックのために造られた国立競技場が重要文化財に指定されていましたので、重文になるのでは?という噂はありました。
行動経済成長期の日本の文化を象徴する存在として、文句なしの重文指定です。
尾張徳川家の菩提寺、建中寺の本堂と御霊屋が重文に
建中寺は、尾張藩二代藩主の徳川光友が、父で初代藩主の義直の菩提を弔うために創建した浄土宗のお寺です。本堂と徳川家御霊屋の二件が重文になりました。
1651年の創建当初の本堂は大曽根の大火で失われ、現在の本堂は18世紀後半の再建です。将軍家の菩提寺である東京・増上寺の本堂を参考にした装飾など、徳川御三家の名に恥じぬ壮麗な建築です。
義直150回忌のために造られた御霊屋は1798年の建築です。日光東照宮と同じく、権現造の豪華絢爛な建築です。
ヴォーリズ建築から大丸ヴィラが重文に
(写真:Otraff/ CC BY-SA 3.0)
ヴォーリズはキリスト教の伝道のために明治時代に来日したアメリカ人で、滋賀県近江八幡市を拠点に、建築家としても活躍しました。 ヴォーリズの建築は関西に多く現存しており、近代建築ファンに愛されています。
2016年には神戸女学院のヴォーリズ建築が初の重文指定を受け、今回で二例目ということになります。
今回重文指定を受けることになった旧下村家住宅洋館は大丸ヴィラの別名で愛される京都御苑の南西に隣接する洋館です。
別名の通り、京都発祥の百貨店・大丸の創業者、下村家の邸宅として建てられたものです。
京都モダン建築祭などで公開されることがあるので、足を運んでみては?
江戸町屋や戦後の名建築など3件が重文に
そのほか、重文に指定されたのは3件。
(写真:運動会プロテインパワー/ CC BY-SA 4.0)
東京・文京区のスカイハウスは、戦後を代表する建築家の一人、菊竹清訓の自宅として建てられたもの。文化財・日本美術の愛好家にとって馴染みの深い、江戸東京博物館や九州国立博物館の建物も菊竹さんの設計です。
(写真:Opqr/ CC BY-SA 4.0)
旧京藤家住宅は、京都からの北陸への玄関口にあたる、今庄宿に残る福井県内最古の町屋建築で、19世紀初頭の建物。週末には公開されているそうですので、宿場町の雰囲気と合わせて楽しめそうです。
愛知県豊田市の旧今井貯木場施設は、長野や岐阜で採れた木材を矢作川の水運で輸送するための拠点として、大正七年に造られたものです。木材を貯めておく貯木池の遺構が現存しています。木材はここで筏に組まれ、さらに下流の方へと運搬されました。
最新の国宝・重要文化財を文化財マップで!
以上、新指定の国宝・重要文化財建造物のご紹介でした。
文化財マップでは最新のものも含め、全ての国宝と国指定文化財を地図でご紹介しています。
ぜひぜひご活用ください!
「文化財マップ」はこちら→→ https://bunkazai-map.colour-field.jp
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